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チューリッヒの企業保険市場

保険会社、再保険会社およびブローカー

チューリッヒは、世界的な元受保険会社と第一級の世界的再保険会社の双方の本拠地であるという特色を、ミュンヘンと共有している。1863年に設立され、前章で取り上げたSwiss Reは、同じ湖岸沿いのさらに先にあるミーテンカイに本社を置いている。外国グループのスイス子会社、スペシャルティ保険会社、ならびにAXA、Allianz、Generali、Helvetia Baloiseその他のスイスの会社とともに、これらは、スイスの産業顧客が市外に出ることなく保険の大部分を手配できる市場を形成している。姉妹編で検討するジュネーブとの比較は示唆に富む。ジュネーブは、プライベートバンキング、コモディティ取引および国際機関の中心地として発展し、その保険業はこれらの集積のニーズに集中していた。これに対してチューリッヒは、世界の産業リスクおよび巨大災害リスクを引き受ける大規模なバランスシートの所在地となった。

ブローカーはこの市場の第二の柱である。大規模な企業リスクについて、顧客が保険会社と直接取引することはまれである。保険ブローカーはリスクを分析し、プログラムを設計し、市場への引受申込資料を作成し、複数の保険会社と条件を交渉し、保険金請求において顧客を支援する。スイス最大の独立系ブローカーであるKesslerは、Zurich Insuranceを生み出したのと同じ海上貿易にその起源を有する。Johann Kesslerは1915年、世界中への輸送品を対象とする貨物保険の専門業者として同社を設立した。同社は現在も創業家の第4世代によって経営されており、チューリッヒに本社を置き、リヒテンシュタインにも拠点を有している。船の舵輪をかたどった同社のロゴは、こうした始まりを想起させる。国際的には、同社はMarshのネットワークと提携している。1

改正保険監督法の下では、保険仲介者はスイス金融市場監督機構(FINMA)によって規制され、拘束仲介者と非拘束仲介者とが区別されている。ブローカーを含む非拘束仲介者は、FINMAに登録し、研修要件を満たし、専門職業賠償責任保険またはこれと同等の財務的担保を保有しなければならない。詳細は次章で扱う。ここでは、Lloyd’sのような外国市場のためにスイスの保険契約者と直接取引するブローカーも、FINMAの保険仲介者登録簿に登録されなければならないことを指摘すれば足りる。2

チューリッヒにおけるLloyd’s

Lloyd’s of Londonは、チューリッヒ市内に正式な拠点を有している。Lloyd’sは、生命保険、疾病保険および権利保護保険を除くすべての種目の保険を引き受ける認可をスイスで受けており、チューリッヒのSeefeldstrasse 7にスイスにおける管理事務所および総代理人を置いている。スイスのリスクを補償するLloyd’sのすべての保険証券は、総代理人の所在地としてチューリッヒ事務所を記載しなければならない。スイスのオープンマーケット取引をLloyd’sに手配するブローカーは、オープンマーケット・コレスポンデントとしての承認を受けなければならず、スイスに本社を置く顧客のためのグローバル契約はスイス保険法に適合しなければならない。3 このようにLloyd’sのスイス支店は、スイスの企業に対し、スイスの監督法の保護の下で、海上、航空、ポリティカル・リスクおよびサイバーといったスペシャルティ種目を含め、ロンドン市場のシンジケートへのアクセスを提供している。Beazleyの買収が完了すると、Lloyd’sの主要グループの一つがチューリッヒの持株会社の最終的な支配下に入ることになる。

チューリッヒの集積としての産業保険

いくつかの特徴が、チューリッヒを産業保険および企業保険にとって自然な所在地としている。第一に、資本である。大規模な企業リスクには強固なバランスシートと高い格付を有する保険会社が必要である。顧客とその貸手は、数億の損害をもたらしうるリスクについて、脆弱な保険会社による補償を受け入れないからである。第二に、専門知識である。D編で保険数理学の発展におけるその役割を述べた連邦工科大学と、チューリッヒ大学は、エンジニア、数学者、経済学者および法律家を輩出している。ZurichとSwiss Reにリスクエンジニア、保険金請求の専門家および引受担当者が集中していることにより、専門家が保険会社、再保険会社、ブローカーおよびキャプティブの間を移動できる労働市場が生まれている。第三に、法である。スイスの保険契約法は伝統的に、商取引の当事者に広い契約の自由を認めてきた。スイスの裁判所、とりわけチューリッヒ州(カントン)の商事裁判所は、複雑な保険紛争について長い経験を有している。次節で検討する改正保険契約法は、大口顧客についてこの自由を維持し、部分的には拡大した。

第四の特徴は、より広い意味での中立性である。ドイツ、フランスまたは米国の産業グループのためにグローバル・プログラムを主導するスイスの保険会社は、欧州連合(EU)および米国の外に本拠を置く取引相手を提供する。その取引相手は、欧州委員会がソルベンシーIIと同等と認めたソルベンシー制度を有しつつ、いずれの陣営からも独立している監督当局の監督に服している。4 この立場の裏面として、スイスの保険会社がEUで事業を引き受けるには、市場アクセス協定、現地子会社および支店が必要となる。この課題に、スイスの保険会社は19世紀以来、広範な外国子会社網を通じて対処してきた。1989年に欧州経済共同体との間で締結された生命保険以外の直接保険に関する連邦協定は、双方の損害保険会社の支店および代理店について開業の自由を保障しているが、国境を越えたサービスの提供はその適用範囲外にとどまっている。5

注

  1. Kessler & Co AG, “Tradition and history”, https://www.kessler.ch/en/about-kessler/tradition-and-history. ↩
  2. Lloyd’s, “Doing business in Switzerland”, https://www.lloyds.com/market-resources/multinational/our-global-network/switzerland. 同ページは、スイスの保険契約者と直接取引するLloyd’sのブローカーに対し、FINMAの公開保険仲介者登録簿への登録を求めている。 ↩
  3. Lloyd’s, “Doing business in Switzerland”, https://www.lloyds.com/market-resources/multinational/our-global-network/switzerland. ↩
  4. Commission Delegated Decision (EU) 2015/1602 of 5 June 2015 on the equivalence of the solvency and prudential regime for insurance and reinsurance undertakings in force in Switzerland based on Articles 172(2), 227(4) and 260(3) of Directive 2009/138/EC, https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:32015D1602, 2015年10月14日施行。同等性については本編の次章で扱う。 ↩
  5. 連邦外務省欧州局, “Versicherungen”, https://www.europa.eda.admin.ch/de/versicherungen. 同ページは、スイスの保険会社がEUにおいて対等な条件で代理店および支店を設置または取得できること、同協定が直接損害保険にのみ適用されること、生命保険会社、再保険会社および法定社会保障制度がその適用範囲外にあること、ならびに同協定が開業の自由のみを規律し、国境を越えた保険活動を規律しないこと(SR 0.961.1)を述べている。 ↩

本記事は一般的な情報提供のみを目的としています。法律上または税務上の助言を構成するものではなく、個別案件に関する助言に代わるものでもなく、弁護士と依頼者との間に委任関係を生じさせるものでもありません。本記事は2026年10月時点の法的状況を反映しています。

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