スイスと欧州のMiCA制度
欧州の枠組み
欧州連合(EU)の暗号資産市場規則(MiCA)は、2023年6月に発効した。資産参照型トークンおよび電子マネー・トークンに関する編は2024年6月30日から、その余の部分は2024年12月30日から適用されている。加盟国は、2024年12月30日以前に活動していた暗号資産サービス提供者が、遅くとも2026年7月1日に終了する経過期間中、国内法に基づき事業を継続することを認めることができた。1MiCAは、既存の金融商品に該当しない暗号資産の発行、資産参照型トークンおよび電子マネー・トークン、ならびに暗号資産サービス提供者について、統一的な規則を定めている。一つの加盟国における認可は、他の加盟国にパスポートすることができる。
スイス企業にとっての帰結
スイスの提供者にとって、欧州の制度は三つの帰結をもたらす。第一に、市場アクセスである。スイスは欧州連合にも欧州経済領域(EEA)にも加盟しておらず、スイス法はパスポートを付与しない。EU域内の顧客に継続的にサービスを提供しようとするスイスの暗号資産企業は、子会社を通じて加盟国で認可を取得するか、顧客自身の専らの主導によって提供されるサービスに関する狭い適用除外に依拠しなければならない。スイスの最大手の暗号資産機関は前者の道を選択している。AMINAは2025年11月3日、オーストリア金融市場監督庁が同社の子会社AMINA (Austria) AGに対し、専門顧客向けの取引、カストディ、ポートフォリオ管理およびステーキングを対象とするMiCA上の暗号資産サービス提供者としての免許を付与したこと、およびすでにさらに13の欧州諸国においてサービスの届出を行ったことを発表した。2
第二の帰結は競争上のものである。MiCAは、欧州の電子マネー・トークンの発行者およびサービス提供者に、単一の規則の下で約4億5,000万人の住民を擁する単一市場を与える。スイスの企業は、ステーブルコインの枠組みを欠き、ごく少数の機関しか保有していないフィンテック免許を伴う、断片化した本国の制度に直面していた。2025年の連邦参事会の改革は、意見聴取手続の資料がより発展した暗号資産規制を有する法域に言及していることから明らかなとおり、この競争圧力への対応として読むことができる。第三の帰結は、同等性と解釈に関わる。スイスはMiCAを採用しないものの、今回の改革は、ホワイトペーパー、ステーブルコインの完全な裏付け、額面での償還および準備資産の分別など、MiCAのいくつかの概念を借用している。新制度について助言するスイスの弁護士は、MiCAおよびその下で発展した欧州の監督上のガイダンスを背景としてこれを読むことになるであろう。
アプローチの相違
それでも、スイスの法案はいくつかの点でMiCAと異なる。法案はスイスのステーブルコインの発行を決済手段機関に限定しているが、MiCAは電子マネー機関および信用機関が電子マネー・トークンを発行することを認めている。法案は、MiCAと同様に、証券に該当するトークンについては既存の証券法に依拠するが、取引的性格を有する暗号資産という残余区分は消極的に定義されており、不明確であるとの批判を受けている。MiCAが独自の行為規制を含むのに対し、法案は金融サービス法(FinSA)を暗号資産サービスに拡張している。提供者の数が約3,000から150ないし300にまで減少しかねないという、欧州型の集約に関する業界の警告は、スイスの市場が欧州の経験を注視していることを示している。3
チューリッヒの依頼者にとっての実務上の結論は、欧州での展開を志向する暗号資産事業は、今や二つの規制上の関係を必要とするということである。スイスの機関は、チューリッヒからスイスおよび多くの非欧州の顧客にサービスを提供しつつ、EU域内の顧客には欧州の子会社を利用することができる。同じ構造は伝統的なプライベートバンキングでもおなじみのものであり、チューリッヒの銀行は数十年にわたり、欧州の顧客に到達するためにルクセンブルク、ドイツその他の子会社を利用してきた。こうして暗号資産分野は、スイスの金融センターが銀行守秘義務の終焉後の数年間に習得したパターンを再現したのである。
注
- 欧州証券市場監督機構(ESMA), “Markets in Crypto-Assets Regulation (MiCA)”, https://www.esma.europa.eu/esmas-activities/digital-finance-and-innovation/markets-crypto-assets-regulation-mica. ESMAは、ホワイトペーパー、認可を受けた暗号資産サービス提供者および規則に違反する事業者の暫定登録簿を管理している。 ↩
- AMINA Bank, “AMINA Becomes the First Crypto Banking Group to Receive a MiCA License through its Austrian Subsidiary”、2025年11月3日、https://aminagroup.com/press/amina-becomes-the-first-crypto-banking-group-to-receive-a-mica-license-through-its-austrian-subsidiary/. ↩
- finews.ch, “Stablecoin-Vorlage: Ein wichtiges Zeichen, aber nun muss nachgebessert werden”、2025年12月9日、https://www.finews.ch/news/finanzplatz/70466-stablecoin-bundesrat-finanzinstitutsgesetz-finig-krypto-vernehmlassung-kryptoinstitute-kryptodienstleister-finma-bewilligungsverfahren-innovationsschub-emittenten-hans-kuhn-sbf-cva-sfta-cmta(欧州連合において予想される集約について)。 ↩
本記事は一般的な情報提供のみを目的としています。法律上または税務上の助言を構成するものではなく、個別案件に関する助言に代わるものでもなく、弁護士と依頼者との間に委任関係を生じさせるものでもありません。本記事は2026年10月時点の法的状況を反映しています。