改正保険契約法の下での企業保険
2022年の改正
スイスの保険契約に関する連邦法(Versicherungsvertragsgesetz、保険契約法(VVG)、SR 221.229.1)は1908年に制定され、1910年に施行された。同法は、2020年6月19日の改正法によって大幅に改正され、この改正法は2022年1月1日に施行され、同日以後に締結された契約に適用される。1 この改正は、企業顧客にとって重要ないくつかの点で同法を現代化した。改正は、保険契約者が14日以内に行使できる撤回権、より長期の契約を3年目の終わりに終了させる各当事者の法定の権利、契約に基づく請求権についての5年の消滅時効期間、ならびに遡及補償および保険会社の情報提供義務に関する新たな規定を導入した。2 もっとも、産業保険にとっては、二つの変更が際立っている。すなわち、プロの保険契約者に関する特別制度と、被害を受けた第三者の賠償責任保険会社に対する直接請求権である。
プロの保険契約者
企業保険市場にとっての中心的な新機軸は、VVG第98a条である。同条は、同法の片面的強行規定から契約によって逸脱することができるプロの保険契約者という類型を定めている。片面的強行規定は、本来、保険契約者に不利に変更することができないものである。この定義には、年金基金、金融仲介業者および保険会社、専門的なリスク管理を備えた公的主体、ならびに総資産、売上高および自己資本についての三つの基準値(それぞれ2,000万スイスフラン、4,000万スイスフランおよび200万スイスフラン)のうち二つを超える大企業が含まれる。3 VVG第97条に列挙される一定の絶対的強行規定は、すべての者について引き続き拘束力を有する。4
その結果、スイスの保険市場は二つの法的領域に分けられることになる。消費者および小規模事業者については、情報提供、撤回、終了および義務違反の効果に関する片面的強行規定が全面的に適用される。産業顧客については、当事者は独自の解決策を交渉することができ、たとえば契約締結前の告知義務違反の効果、解約予告期間、または損害発生後の解約権について取り決めることができる。この規定は、市場が長らく実践してきたことを追認するものである。すなわち、グローバルなブローカーの助言を受ける多国籍企業は、立法者が消費者に与える保護を必要とせず、他者のために設計された法定の保護よりも契約上の確実性を選好しうる。実務上、チューリッヒから主導される国際プログラムの保険証券の文言には、現在では、保険契約者のプロとしての地位を確認し、同法のどの規定が排除されるかを特定する条項が通例として含まれている。
この新制度は、裁判所がまだ解決していない問題を提起している。たとえば論者は、被害を受けた第三者の直接請求権を、プロの保険契約者との間で合意された普通保険約款において一般的に放棄させることができるか、またすべての片面的強行規定を契約によって排除することができるかを問うている。5 第98a条の類型は保険契約者を基準として定義されているため、大規模な親会社が締結したグループ保険証券は、単独では要件を満たさない子会社をも補償することがある。したがって、保険契約者および被保険者の定義を慎重に起草することが不可欠である。
賠償責任保険会社に対する直接請求権
第二の変更は、長年の原則を覆すものである。旧法の下では、被害を受けた第三者は、道路交通のように特別法がこれを定める場合を除き、原則として加害者の賠償責任保険会社に対する直接請求権を有しなかった。被害者は被保険者を訴えなければならず、被保険者が保険会社に塡補を請求した。被害者は、保険金請求権に対する法定の質権によってのみ保護されていた。現在、VVG第60条第1bis項は次のように規定している。「Dem geschädigten Dritten oder dessen Rechtsnachfolger steht im Rahmen einer allfällig bestehenden Versicherungsdeckung und unter Vorbehalt der Einwendungen und Einreden, die ihm das Versicherungsunternehmen aufgrund des Gesetzes oder des Vertrags entgegenhalten kann, ein direktes Forderungsrecht gegenüber dem Versicherungsunternehmen zu.」したがって、被害を受けた第三者は、保険会社が法律または契約に基づいて主張しうる抗弁および異議を留保しつつ、既存の補償の範囲内で直接請求権を有する。強制賠償責任保険について、VVG第59条第3項はさらに、重過失または故意、義務違反、保険料の不払い、または合意された免責金額に基づく抗弁を被害者に対抗することができないと定めている。6
直接請求権は、すべての既存の保険証券に適用されるわけではない。2025年1月27日の判決において、連邦最高裁判所は、2022年1月1日より前に締結された契約は第60条第1bis項の適用を受けないと判示した。VVG第103a条の経過規定は既存の契約に適用される新規定を列挙しているが、その一覧には直接請求権が含まれていない。7 2022年以降、大半の年次保険証券が更新されたことにより、経過規定の問題の実務上の重要性は低下しつつある。もっとも、長期契約や旧来の損害事故発生ベースの保険証券に基づく請求により、この問題は今後数年間は存続するであろう。
産業賠償責任保険にとって、直接請求権はいくつかの帰結をもたらす。原告側の弁護士は現在、賠償責任保険会社を共同被告とし、またはこれのみを訴えることが多くなっており、これにより保険会社は当初から手続に関与することになり、和解が早まることがある。被保険者である会社が倒産した場合、被害者はもはや保険金請求の追及を倒産管財人に依存しない。同時に、保険会社は免責事由や被保険者による義務違反を含め、契約に基づいて有するすべての抗弁を主張することができる。そのため、被害者の請求権は被保険者自身の補償を上回るものではない。D&O保険証券については、直接請求権は微妙な問題を提起する。保険証券を購入した会社自体がその元取締役に対する請求者となることがあり、いまや補償の範囲内で保険会社に対して直接請求できることになるからである。それに応じて、防御費用と複数の請求者による請求との間で共有の限度額をどのように配分するかをめぐる争いも激しくなる。
注
- LAW.CH, “LAWNEWS – Revidiertes Versicherungsvertragsgesetz (VVG): Erste offene Fragen”, 2022年9月22日, https://law.ch/lawnews/2022/09/revidiertes-versicherungsvertragsgesetz-vvg-erste-offene-fragen/. ↩
- スイス保険協会(Schweizerischer Versicherungsverband), VVG部分改正の対照表(“Änderung vom 19. Juni 2020”), https://svv.ch/sites/default/files/media/documents/2020-06/20200619_Synopse%20Teilrevision%20VVG%20Schlussabstimmung_de.pdf:第2a条第2項(„Die Widerrufsfrist beträgt 14 Tage“)、第35a条第1項(„auf das Ende des dritten oder jedes darauffolgenden Jahres“の終了)および第46条第1項(2年に代わる5年の消滅時効期間)。 ↩
- VVG第98a条(2024年施行時の条文), swissrights.chに掲載, https://www.swissrights.ch/gesetze/Artikel-98a-VVG-2024-DE.php. 同条第2項g号によれば、大企業は三つの基準値(総資産2,000万スイスフラン、純売上高4,000万スイスフラン、自己資本200万スイスフラン)のうち二つを超える場合に要件を満たし、同条第3項によりグループ内では連結財務諸表が基準となる。FINMA, “Business with professional policyholders – regulations from 1 January 2024”, https://www.finma.ch/en/supervision/insurers/professionelle-versicherungsnehmer/ は、定義についてVVG第98a条第2項b号からg号までを参照している。 ↩
- LAW.CH, “LAWNEWS – Revidiertes Versicherungsvertragsgesetz (VVG): Erste offene Fragen”, 2022年9月22日, https://law.ch/lawnews/2022/09/revidiertes-versicherungsvertragsgesetz-vvg-erste-offene-fragen/. 同記事は、プロの保険契約者の7つの類型を要約し、大企業は基準値を超えることにより要件を満たすと指摘している。 ↩
- LAW.CH, “LAWNEWS – Revidiertes Versicherungsvertragsgesetz (VVG): Erste offene Fragen”, https://law.ch/lawnews/2022/09/revidiertes-versicherungsvertragsgesetz-vvg-erste-offene-fragen/, 未解決の問題に関する節。 ↩
- LAW.CH, “LAWNEWS – Neues Direktforderungsrecht des Geschädigten gegen den Haftpflichtversicherer des Schädigers”, 2023年3月30日, https://law.ch/lawnews/2023/03/neues-direktforderungsrecht-des-geschaedigten-gegen-den-haftpflichtversicherer-des-schaedigers/. VVG第60条第1bis項および第59条第3項を引用している。 ↩
- Baur Hürlimann AG, “Kein direktes Forderungsrecht (Art. 60 Abs. 1bis VVG) bei vor dem 1.1.2022 abgeschlossenen Versicherungsverträgen”, https://bhlaw.ch/kein-direktes-forderungsrecht-art-60-abs-1bis-vvg-bei-vor-dem-1-1-2022-abgeschlossenen-versicherungsvertraegen/. 2025年1月27日の連邦最高裁判所判決4A_189/2024を論じている。 ↩
本記事は一般的な情報提供のみを目的としています。法律上または税務上の助言を構成するものではなく、個別案件に関する助言に代わるものでもなく、弁護士と依頼者との間に委任関係を生じさせるものでもありません。本記事は2026年10月時点の法的状況を反映しています。