賃金、派遣労働者、地域の規律
ティチーノ州は、新たに進出したイタリアの雇用主を含むすべての雇用主に適用される規則によって、その労働市場を保護している。州の最低賃金法は2021年12月1日に施行され、経済部門ごとに区分された時間当たり最低賃金(最高は19.50スイスフラン)を定めるとともに、2025年にその範囲を19.75ないし20.25スイスフランとする段階的な引上げを予定していた。1最初の監督に関する2024年6月の報告によれば、監督官は約8,700社と4万7,000人の労働者を調査し、約3パーセントの事案で違反を発見したが、そのかなりの部分は計算の誤りであった。22026年4月20日、州議会は68対4で、2029年から最低賃金を21.75ないし22.25スイスフランに引き上げ、労働協約との関係を再定義する妥協案を可決した。3一般的拘束力を宣言された労働協約と、人の自由移動に対する連邦の付随措置は、特に建設、清掃および警備の分野において、部門別の最低賃金を付け加えている。
イタリアにとどまり、その労働者をティチーノ州に派遣して役務を提供させるイタリアの会社は、連邦派遣労働者法に服する。当該会社は、派遣を事前に届け出、派遣期間中スイスの最低労働条件を遵守し、三者委員会による監督を受け入れなければならない。イタリアからの自営のサービス提供者は、その自営業者としての地位を証明しなければならない。4地元での拠点を築きつつティチーノ州で仕事をしようとするイタリアの建設会社や設備工事会社にとって、これらの規則はしばしばスイスの会社を設立するという決定を左右する。地元の従業員を擁するティチーノ州の会社は届出手続に服さないが、スイスの賃金と前述の社会保障規則を遵守しなければならない。
事業用資産の移転
稼働中の事業の物理的な移転は、見落とされやすい関税とVATの問題を生じさせる。イタリアからスイスに持ち込まれる機械、工具、在庫および車両は輸入品である。それらは、その価額に対するスイスの輸入付加価値税(VAT)(登録事業者は仕入税額として控除可能)と税関手続に服する。イタリア側はこの移転を輸出として扱い、書類が整っていればVATは免税となるが、物品がイタリアの事業から離れる場合には所得税の目的上課税対象となる移転となりうる。イタリアの会社が新たなスイスの会社に資産を売却する場合には、価格は、第F.II章で論じる移転価格規則に基づき独立企業間価格でなければならない。イタリアの会社が単にその生産ラインを移転する場合には、前述のとおり、そのイタリアの事業から離れる資産にイタリア所得税統一法典(TUIR)第166条が適用される。
無形資産には特別な注意が必要である。イタリアで開発されたブランド、特許、ソフトウェアプラットフォームまたは顧客リストは、評価なしにティチーノ州に移すことはできない。スイスの会社が対価を支払わずにそれらを使用すれば、イタリアの当局は黙示の譲渡または使用料を主張することができる。スイスの会社が適正な価格を支払えば、イタリアの会社は譲渡益を実現する。適格特許からの利益について最大90パーセントの軽減を認めるティチーノ州のパテントボックスは、ネクサス・アプローチの下で会社自身の研究活動によって開発された特許にのみ利用可能であり、そのためイタリアから購入した知的財産についてはその恩恵が限られる。5
実務家のために。 - 依頼者がティチーノ州で許可なく不動産を購入する前に、依頼者が実際にそこに住むかどうかを確認すること。 - 移転する従業員、通勤する従業員、イタリアにとどまる従業員を整理し、最初の勤務日より前に許可と社会保障証明書を取得すること。 - 当初から、スイスの最低賃金、一般的拘束力のある労働協約および派遣規則を適用すること。 - 機械、在庫および無形資産の移転を、両国で受け入れられる評価をもって記録に残すこと。
注
- RSI、最低賃金法に基づく最初の監督に関する報道、2024年6月26日、https://www.rsi.ch/info/ticino-grigioni-e-insubria/Salario-minimo-le-aziende-ticinesi-lo-rispettano--2187542.html(当初の最低賃金は時間当たり19.50スイスフラン、同法は2021年から施行);Commissione tripartita in materia di libera circolazione delle persone, Contratti normali di lavoro e legge sul salario minimo、2022年3月1日、https://m4.ti.ch/fileadmin/DFE/DE-USML/salario_minimo/ottenere_salario_diritto.pdf(「dal 1° dicembre 2021, sono in vigore anche i salari minimi, differenziati per settore economico」);"Via libera al salario minimo in Canton Ticino", VareseNews, 2021年11月16日, https://www.varesenews.it/2021/11/via-libera-al-salario-minimo-canton-ticino/1400615/(「dal 2025, il salario minimo cantonale sarà compreso tra 19.75 e 20.25 all'ora」)。 ↩
- RSI、2024年6月26日(前掲)。 ↩
- Ticinonline、最低賃金の妥協案の州議会による可決に関する報道、2026年4月20日、https://www.tio.ch/ticino/politica/1919409/salario-minimo-approvato-il-compromesso。 ↩
- 1999年10月8日の派遣労働者に関する連邦法、SR 823.20、第6条第1項および第3項(「Die Arbeit darf frühestens acht Tage, nachdem der Einsatz gemeldet worden ist, aufgenommen werden」)、droit-bilingue.chの条文、https://www.droit-bilingue.ch/de-fr/8/82/823.20-6-11.html、および第1a条第1項(求めに応じた自営の証明)、https://www.droit-bilingue.ch/de-fr/8/82/823.20-1a-5.html。 ↩
- 2025年11月5日のスタートアップ向けプレゼンテーション(前掲)(最大90パーセントのパテントボックス)。税の調和に関する連邦法(StHA)第24a条および第24b条第1項(特許ごとの研究開発支出総額に対する適格支出の割合(「Nexusquotient」)に応じた90パーセントの軽減)、droit-bilingue.chの条文、https://www.droit-bilingue.ch/de-fr/6/64/642.14-24b-40.html。 ↩
本記事は一般的な情報提供のみを目的としています。法律上または税務上の助言を構成するものではなく、個別案件に関する助言に代わるものでもなく、弁護士と依頼者との間に委任関係を生じさせるものでもありません。本記事は2026年10月時点の法的状況を反映しています。