黙認から執行へ
約半世紀にわたり、市場アクセスの問題は銀行秘密の陰に隠れていた。第D.II章で述べたリラ経済の下では、ルガーノの銀行のイタリア人顧客は、通常、イタリアの通貨法に違反して資金を国外に持ち出し、それを申告しないままにしていた。ミラノで顧客を訪問するスイスのリレーションシップ・マネージャーは、双方をリスクにさらしたが、そのリスクは主として通貨および税務に関する犯罪のリスクであり、イタリア当局にはスイスで起きたことを証明する手段がほとんどなかった。サービスそれ自体、すなわち与えられた助言や購入された証券が、イタリアの手続の対象となることはまれであった。イタリアの金融仲介に関する法自体も新しいものであった。証券会社(società di intermediazione mobiliare、SIM)に関する最初の包括的な制度は1991年1月2日の法律第1号にさかのぼり、イタリア銀行統合法(TUB)は1993年、イタリア金融統合法(TUF)は1998年のものである。1
状況は、第E.II章で述べる2001年から2009年までの税の恩赦、2014年および2015年の自主申告プログラム、そして2017年以降の自動的情報交換によって変化した。資産が申告されると、イタリア国家は、その居住者のうち誰がルガーノに口座を保有しているかを知った。検察官とイタリアの財務警察であるGuardia di Finanzaは、関係がどのように開設され維持されてきたかを再構成することができるようになり、顧客の税務犯罪の捜査が銀行の行為の捜査に転じうることとなった。同時に、欧州法は第三国事業者に関する規律を強化し、イタリア法はそれが残した選択権を行使した。その結果、今日のルガーノの銀行は、イタリア人顧客の資金の出所から生じるリスクは小さくなったが、顧客へのサービスの提供方法から生じるリスクは大きくなっている。
要点。イタリア居住者に対する金融サービスは、提供者がそれを記帳する場所にかかわらず、イタリア法および欧州連合(EU)法の下ではイタリアで提供されたものとして扱われる。スイスの許可は、その顧客にサービスを提供する権利を与えない。スイスの提供者は、イタリアの許可、イタリアの支店、または顧客が専ら自らの発意により提供者に接触したことの証明を必要とする。スイスの監督法は、提供者が外国の規律を遵守するという独自の要件を付け加えている。
商業上の利害は相当なものである。スイス・プライベートバンク協会は、スイスから運用される国境を越えた個人資産の約40パーセントがEUの顧客に由来すると推計しており、ルガーノではその業務に占めるイタリアの割合がスイスの他のどこよりも高い。2 第E.I章は、ティチーノ州の銀行に関する数値を示す。本章の目的のためには、ティチーノ州の銀行数が2008年の77行から2024年の39行に減少したこと、そして同州の銀行家と政治家が閉ざされたイタリア市場をその理由の一つとして繰り返し挙げてきたことを指摘すれば足りる。3
注
- 1991年1月2日の法律第1号(Disciplina dell'attività di intermediazione mobiliare)。1993年9月1日の立法令第385号(TUB)。1998年2月24日の立法令第58号(TUF)。 ↩
- スイス・プライベートバンク協会(VAV/ABPS)、"Market access"、2025年9月1日、https://www.vav-abg.ch/en/topics/market-access/lorem-ipsum-dolor-sit-amet/。 ↩
- Ufficio di statistica del Cantone Ticino(USTAT)、Denaro e banche、2026年3月、表12.1、https://www.abti.ch/sito/wp-content/uploads/Denaro-e-banche-2026.pdf(2024年に39行、うち12行がティチーノ州に本店)。René Chopard(Centro di Studi Bancari)、"Un approccio sistemico al distretto ticinese di servizi finanziari: Banche: struttura ed evoluzione", Dati 4-2010、https://www3.ti.ch/DFE/DR/USTAT/allegati/articolo/1605dss_2010-4_10.pdf(2008年の77行から2009年の73行への減少)。 ↩
本記事は一般的な情報提供のみを目的としています。法律上または税務上の助言を構成するものではなく、個別案件に関する助言に代わるものでもなく、弁護士と依頼者との間に委任関係を生じさせるものでもありません。本記事は2026年10月時点の法的状況を反映しています。