その他の制裁体制
対象となっている国はロシアだけではない。スイスは、イラン、北朝鮮、シリア、ベラルーシ、ミャンマー、ベネズエラその他の国家に対する制裁、並びにテロ、汚職又は人権侵害に関係する者に対する措置を適用している。1スイス・マネーロンダリング報告局(MROS)の年次報告書は、イランは北朝鮮と異なりバリューチェーンから排除されていないため、コモディティ取引に関連するリスクを有すると指摘している。2
ジュネーブのコモディティ取引にとっては、いずれも産油国であるイラン及びベネズエラに対する制裁が直接の関係を有する。ドル取引及びこれらの国と取引する外国人を対象とする米国の制裁により、トレーダー及び銀行は、米国の制裁金をおそれて、スイス法の下では適法な取引を断念するに至っている。この過剰遵守、すなわち先回りした撤退という現象は、金融センターが行い得る活動を縮小させるものであり、米国の制裁の域外適用の効果を示している。
いわゆるマグニツキー法をモデルとして複数の国が採択した汚職及び人権に関連する制裁は、国家間の紛争と関係のない自然人及び法人を対象とする。3これらは、重要な公的地位を有する顧客層がその対象となり得る資産管理に関わるものであり、次章で扱う問題につながっている。
注
- 経済省経済事務局(SECO)、「Ordonnances de sanctions」、seco.admin.ch(2026年9月閲覧):本章で述べたウクライナ及びロシアに関する制度に加え、リビア、スーダン、コンゴ民主共和国、ギニア、ギニアビサウ及びブルンジを対象とするものを含む28の命令が施行されている。↩
- スイス・マネーロンダリング報告局、Annual Report 2024、fedpol.admin.ch。↩
- 米国の2016年グローバル・マグニツキー人権責任法、2020年末に採択された人権侵害に関する欧州連合(EU)の制裁制度、及び禁輸法改正の際のマグニツキー法をめぐるスイスの議論。Centre patronal、「La Suisse aura-t-elle sa propre loi Magnitski ?」、centrepatronal.ch(2026年9月閲覧)。↩
本記事は一般的な情報提供のみを目的としています。法律上または税務上の助言を構成するものではなく、個別案件に関する助言に代わるものでもなく、弁護士と依頼者との間に委任関係を生じさせるものでもありません。本記事は2026年10月時点の法的状況を反映しています。