米国の標的となったスイスの銀行
UBSに関する協定の後、米国の司法当局は、その捜査を他のスイスの銀行に拡大した。第D部で述べたとおり、米国で訴追されたザンクト・ガレンの銀行Wegelinは事業を停止した。Credit Suisseを含む他の金融機関も、徹底的な捜査の対象となった。1米国当局は、顧客、リレーションシップ・マネージャー及び資金の流れに関する情報を要求した。
スイスは包括的な解決を模索した。Le Tempsによれば、2012年、ベルンは、米国の裁判所を免れることを期待して、Credit Suisse、HSBC、Julius Baer並びにバーゼル及びチューリッヒの州立銀行を含む11行に対し、従業員の氏名を含むデータを米国に引き渡すことを許可した。2従業員の氏名の送付はスイス国内で大きな憤激と訴訟を引き起こし、後にジュネーブ司法裁判所(Cour de justice)は、Credit Suisseのある従業員のデータを米国に送付したことを違法と判断することとなる。3
政府はその後、銀行が米国との紛争を解決できるようにするための、「Lex USA」と通称される緊急法を提案した。同法が国民議会により否決された後、連邦参事会は2013年7月3日に代替案を提示した。42013年8月29日、スイスと米国は、銀行がその状況を是正することを可能にする協定に署名した。5
米国のプログラムは、銀行をいくつかのカテゴリーに分類した。最大のカテゴリーであるカテゴリー2には、未申告の米国人顧客を受け入れていたことを自主的に認め、司法省との間で不訴追合意を締結することを望む金融機関が含まれた。6これらの銀行は、米国人顧客との取引関係、他の金融機関への資金の流れ及び自らの慣行について詳細な情報を提供し、その上で未申告資産を基準として算定される制裁金を支払わなければならなかった。Pictetのように既に刑事捜査の対象となっていた銀行は別途扱われ、形式上はプログラムの対象外にとどまった。7
2013年10月にイタリアで逮捕され、米国に引き渡されたUBSの元幹部Raoul Weilは、3週間の公判の末、陪審により無罪とされた。8この結果は、スイスの銀行家に対する個人の訴追がまちまちの結果に終わってきたことを想起させるものである。
注
- 2014年5月19日、Credit Suisseは租税詐欺の幇助について有罪を認め、制裁金の総額は26億米ドルに上った(司法省に18億米ドル、連邦準備制度に1億米ドル、ニューヨーク州金融サービス局に7億1,500万米ドル)。U.S. Department of Justice「Credit Suisse Pleads Guilty to Conspiracy to Aid and Assist U.S. Taxpayers in Filing False Returns」、2014年5月19日のプレスリリース、justice.gov。 ↩
- 「Dès 2008, les événements qui conduiront à la mort du secret bancaire se succèdent」、Le Temps、2013年12月15日。 ↩
- 「Le fisc américain encaisse 740 millions」、Tribune de Genève、2015年12月19日。 ↩
- Le Temps、2013年12月15日、前掲。 ↩
- 「UBS versus USA, une longue histoire」、swissinfo.ch(2026年9月閲覧)。「Sérieuse amende pour Lombard Odier & Cie SA」、Tribune de Genève、2016年1月3日。同記事は、是正プログラムが2013年8月29日に発効したとしている。 ↩
- Tribune de Genève、2016年1月3日、前掲。 ↩
- Tribune de Genève、2015年12月19日、前掲。 ↩
- swissinfo.ch「UBS versus USA, une longue histoire」、前掲。 ↩
本記事は一般的な情報提供のみを目的としています。法律上または税務上の助言を構成するものではなく、個別案件に関する助言に代わるものでもなく、弁護士と依頼者との間に委任関係を生じさせるものでもありません。本記事は2026年10月時点の法的状況を反映しています。