2020年以降のジュネーブ
ジュネーブ金融センターは、2020年の詐欺事件から独自の教訓を引き出した。活動を続けた銀行は手続を強化し、一流トレーダーに資金供給を集中させた。Banque cantonale de Genèveと中規模の金融機関は事業を拡大した。銀行以外の資金供給者が地歩を築いた。業界団体は行動規範と研修プログラムを推進した。
貿易金融の規制をめぐる議論は続いた。スイスでは、この活動は特別な規則なしに通常の銀行監督の下に置かれているのに対し、シンガポールでは当局がスキャンダルの後に要件を厳格化した。1多重金融の防止を可能にする商品質権の登録簿の問題は、なお未解決である。
2020年の詐欺事件は、中世の大市以来このセンターの歴史が繰り返してきた教訓を想起させた。すなわち、書類に基づく信頼は書類が真正である場合にのみ価値を持ち、検証こそがその代価である。硬貨を秤量した両替商、重量を確認した検査人、複式簿記で帳簿をつけた銀行家は、信頼が管理を通じて築かれることを知っていた。2020年にこれを忘れた銀行は、高い代償を支払った。
設例。あるトレーダーが、価値1億ドルの同一の石油積荷を担保として、3つの銀行からそれぞれ9,000万ドル、計3件の資金供給を受け、各銀行に船荷証券と検査証明書を呈示する。こうしてトレーダーは、価値1億ドルの商品について2億7,000万ドルを手にする。価格が30パーセント下落すると、積荷の価値は7,000万ドルにすぎなくなる。余剰資金を他の損失の穴埋めに用いていたトレーダーは、返済不能となる。3つの銀行は、自らが同一の担保を保有していることを知り、2億7,000万ドルの債権に対して7,000万ドルを分け合うことになる。各行の損失は約6,700万ドルである。数値は架空のものであるが、仕組みは2020年の詐欺事件のそれである。
注
- シンガポール銀行協会(ABS)、2020年11月30日付プレスリリース、「ABS launches Code of Best Practices for Commodity Financing」:28行から成る作業部会が「シンガポール金融管理局(MAS)、シンガポール企業庁(ESG)及び会計企業規制庁(ACRA)の支援を得て」策定した規範であり、トレーダーのガバナンス及びリスク管理、並びに「資金供給を受けた取引、商品及び債権に対する十分な透明性と管理」を扱う。GTR、「Singapore banks unveil tougher commodity finance standards after fraud scandals」、2020年12月1日(銀行の同意なき同一商品の多重金融の禁止、補償状の取扱い)。GTR、「Singapore goes live with anti-fraud registry to eliminate duplicate financing」、2023年6月23日(ABS Trade Finance Registry、MonetaGoの技術)。↩
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