事例:内部から見た疑わしい取引の届出
設例。ジュネーブのある銀行のコンプライアンス責任者は、アラブ首長国連邦の会社が保有する口座についてアラートを受ける。その会社の実質的支配者は西アフリカのある国の国民である。3か月の間に、この口座は三つのトレーディング会社から420万米ドルを受け取り、390万米ドルをドバイおよびキプロスの口座に送金している。フランス語および英語による公開情報の分析により、実質的支配者が天然資源担当大臣の兄弟であることが判明する。これは、顧客が口座開設時に申告していなかった情報である。コンプライアンス責任者は分析を10ページにわたって文書化し、コンプライアンス委員会に諮り、口座を凍結し、マネーロンダリング通報機関(MROS)に届出を行う。同機関は事案をスイス連邦検察庁に移送する。銀行は取引関係を終了し、書類を10年間保存し、重要な公的地位を有する者との親族関係を見抜けるようアドバイザーを研修する。分析の費用は約2万スイスフランであるのに対し、デューデリジェンスの懈怠を理由とするスイス金融市場監督機構(FINMA)の制裁の費用は、これとはまったく比較にならないものとなったであろう。
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