地震保険をめぐる未決着の議論
ハザードが知られているにもかかわらず、スイスには建物に地震保険を付すべき一般的な義務は存在しない。いくつかの州(カントン)の建物保険機関が限定的な補償を提供している。州の保険機関は共同でスイス地震補償プール(Schweizerischer Pool für Erdbebendeckung)を創設しており、これは参加州における地震損害について限定的なキャパシティを提供している。1このキャパシティは、強い地震が引き起こす損害と比べれば小さい。民間保険会社は任意の地震保険を提供しているが、これを購入する不動産所有者はわずかであり、そのため大半の建物は無保険のままである。
強制地震保険を導入しようとする連邦の取組みは、繰り返し失敗してきた。2000年代初頭およびその後の憲法上の根拠に関する提案は、議会で多数を得られなかった。その理由の一部は、公的独占を有する州が自らの権限を擁護したことにあり、また一部は、不動産所有者が追加の強制保険料に抵抗したことにある。2バーゼル=ラントシャフト州は連邦地震保険を求める州発議を提出したが、連邦議会はこれを採択しなかった。
2021年、連邦議会の両院は、全州議会の環境委員会の動議を採択した。この動議は、連邦参事会に対し、偶発債務に基づく地震保険制度を準備するよう求めるものであった。このモデルの下では、不動産所有者は定期的な保険料を支払わない。強い地震の後に、建物の保険価額の一定割合を拠出する義務を負い、その資金が再建の財源に充てられる。3このモデルは、定期的な保険料に対する抵抗を克服しつつ、再建に必要な財源を提供することを目指していた。
連邦参事会は、2024年末に憲法改正案を議会に提出した。同案は、強い地震の後に連邦が不動産所有者に対しその建物の保険価額の一定割合を上限として拠出を義務付けることができるものとし、他方でより小さな損害は引き続き民間保険の領域とするものであった。4全州議会の環境委員会は、2025年10月、市場がすでに解決策を提供していること、そして大災害の負担は社会全体が負うべきであることを理由に、僅差の多数で審議に入らないことを勧告した。52026年夏、国民議会の対応する委員会は僅差で同案に賛成票を投じた。議会審議の帰趨は、2026年秋の時点でなお未決であった。6
バーゼルにとって、この議論は直接の関係を有する。強い地震の影響を最も受ける州の一つとして、バーゼル=シュタット州では、その建物保険機関、民間保険会社および住民が、既存の仕組みでは補償できない損失に直面することになろう。偶発債務モデルは費用を全国に分散させるものであり、ハザードの最も高い地域に利益をもたらすであろう。しかし、連邦レベルの解決策が繰り返し失敗してきたことは、生きている人々の記憶の中で現実化したことのない巨大災害リスクの配分について、政治制度が決定を下すことの難しさを示している。
注
- 1978年に設立された州の建物保険機関のスイス地震補償プールと、その年間の限定的なキャパシティ(約20億スイスフラン規模)については、州火災保険協会(VKF)の刊行物を参照。数値および日付は要確認。 ↩
- 2012年頃の議員発議の否決を含む、連邦レベルで強制地震保険を導入しようとしたこれまでの試みについては、連邦議会の記録(Curia Vista)を参照。要確認。 ↩
- 2021年に両院が採択した、地震損害に対する偶発債務に関する全州議会環境・国土計画・エネルギー委員会(UREK-S)の動議(動議20.4022)については、Curia Vistaを参照。番号および日付は要確認。 ↩
- 地震による建物損害の財源調達に関する連邦権限の導入についての連邦参事会の教書(24.095)(2025年に連邦官報で公表、BBl 2025 151)を参照。現状は要確認。 ↩
- 案24.095について7対6で審議に入らないことを決定した2025年10月31日のUREK-Sのメディアリリースを参照。現状は要確認。 ↩
- 案24.095に13対12で賛成した2026年8月31日/9月1日の国民議会環境・国土計画・エネルギー委員会(UREK-N)のメディアリリースを参照。本会議の決定は要確認。現状は要確認。 ↩
本記事は一般的な情報提供のみを目的としています。法律上または税務上の助言を構成するものではなく、個別案件に関する助言に代わるものでもなく、弁護士と依頼者との間に委任関係を生じさせるものでもありません。本記事は2026年10月時点の法的状況を反映しています。