ベースライン:クレディ・スイス後の唯一のグローバル銀行
2023年以降のスイスの銀行の構図における最も目に見える変化は、第二の大銀行の消滅である。1世紀以上にわたり、スイスには、資産運用・資産管理、投資銀行業務および国内法人業務において互いに競い合う二つのグローバル銀行が存在した。2023年3月19日に発表され同年6月に完了したUBSによるCredit Suisseの緊急買収以来、スイスにはグローバル銀行が一つしかない。1 統合後の銀行は数兆ドルの投資資産を運用しており、ほとんどの尺度で世界最大の資産運用・資産管理機関となっている。合併時点でのそのバランスシートは、スイスの国内総生産の約2倍に達していた。2
この集中の帰結は、第E部第I章および第F部第III章で詳しく論じた。そのうち三つがシナリオにとって重要である。第一に、スイス国家は今や容易には負担できない暗黙のリスクを負っている。UBSの破綻は連邦の財政能力を超えるからである。第二に、スイスの銀行業のいくつかの分野、とりわけスイスの大企業向け融資や一定の形態の貿易金融および資本市場業務においては、Credit SuisseがUBSに対する明らかな代替であったため、競争が減少した。競争委員会と連邦参事会はこれらの影響を検討したが、買収は緊急法に基づき通常の合併審査手続から除外されていた。3 第三に、国家と唯一のグローバル銀行との政治的関係は、1990年代以来のいかなる時期よりも緊張したものとなった。
この緊張は、自己資本をめぐる議論において表面化した。第F部第III章は、2024年4月の銀行の安定性に関する連邦参事会報告書から、2026年4月の銀行法(BankA)改正に関する教書に至る経緯をたどった。同教書は、システム上重要な銀行は、その外国子会社への出資を親銀行のレベルで普通株式等により完全に裏付けるべきであると提案した。4 第一院として2026年9月に決定した全州議会は、この要件を90%の裏付けに緩和した。法案はその後国民議会に送られ、最終決定は2027年より前には見込まれていなかった。5 結果がどうであれ、この議論は、スイス国家とUBSがグローバル銀行を擁することの代価について異なる見解を有していることを示した。本章のシナリオは、この相違を出発点とする。
注
- 2023年3月19日に発表され2023年6月12日に完了したUBS Group AGによるCredit Suisse Group AGの買収、およびその後の2024年5月31日のCredit Suisse AGのUBS AGへの法的合併については、UBSおよび連邦参事会のプレスリリース、ならびに第E部第I章を参照。日付は要確認。 ↩
- 買収後のUBSの規模(数兆米ドルの投資資産、スイスのGDPの約2倍のバランスシート)と世界の資産運用・資産管理機関の中での地位については、UBS Group AGの2023年〜2025年の年次報告書、および2024年4月10日の銀行の安定性に関する連邦参事会報告書を参照。数値は要確認。 ↩
- 買収の通常の合併審査手続からの除外、スイス金融市場監督機構(FINMA)および競争委員会の関与、ならびにスイスの法人向け銀行業務における競争への影響に関するその後の議論については、競争委員会(COMCO)および連邦参事会の公表資料を参照。状況は要確認。 ↩
- 2024年4月10日の銀行の安定性に関する連邦参事会報告書、2025年6月6日の提案、および2026年4月22日の銀行法改正に関する教書については、第F部第III章および連邦財務省の公表資料を参照。状況は要確認。 ↩
- 外国子会社への出資の90%を普通株式等Tier1(CET1)で裏付けることに賛成した2026年9月23日の全州議会の採決については、第F部第III章および連邦議会の議事記録を参照。状況は要確認。 ↩
本記事は一般的な情報提供のみを目的としています。法律上または税務上の助言を構成するものではなく、個別案件に関する助言に代わるものでもなく、弁護士と依頼者との間に委任関係を生じさせるものでもありません。本記事は2026年10月時点の法的状況を反映しています。