シナリオ3:アジアへの転換
第三のシナリオは、富の地理に焦点を当てる。それは、アジア及び湾岸諸国における個人資産の増加が引き続き欧州のそれを上回り、これらの地域の顧客が自らの資産を自国に近い場所で計上することを好むと想定する。香港、シンガポール及びドバイが最大のクロスボーダー・ブッキングセンターとなる。スイスは、欧州の顧客及び政治的に中立な法域を求める顧客にとって重要な拠点であり続けるが、その世界的なシェアは著しく低下する。スイスの銀行は、チューリッヒ、ジュネーブ、シンガポール、香港及びドバイにブッキングセンターを置き、管理機能をそれらに分散させたグローバルなマルチハブ型の金融機関として運営することで対応する。1
このシナリオでは、スイスの銀行が生み出す価値は、ますますスイス国外で生じることになる。スイスの本社はガバナンス、リスク管理及び投資リサーチについて責任を負い続ける一方、資産の計上、顧客関係及び増加する雇用の割合はアジア及び湾岸諸国に移る。スイスのブランドは、スイスの領土との結びつきは弱まるものの、価値を保ち続ける。このパターンは、時計や医薬品など、ブランドと本社がスイスにとどまり、生産と販売がグローバルに行われる他のスイスの産業でおなじみのものである。
地政学がこのシナリオの形を決めるであろう。中国と西側との緊張は、ブッキングセンターとしての香港とシンガポールを分断し得るものであり、顧客は政治的な立ち位置に応じて選択することになる。湾岸諸国は、陣営の間に位置することから利益を得る可能性がある。スイスは、アジアの拠点の政治的リスクを懸念する顧客にとって魅力を取り戻す可能性があり、それはこの転換を部分的に逆転させるであろう。道標としては、各拠点における計上資産の相対的な伸び率、スイスの銀行による新規採用の所在地、アジア及び湾岸諸国におけるスイスの銀行の規制上の扱い、並びに主要国の制裁政策が挙げられる。2
バーゼルにとって、アジアへの転換の直接的な影響は限定的であろう。バーゼルの銀行は主として欧州の顧客にサービスを提供しているからである。アジア及び中東に拠点を有するBank J. Safra Sarasinは、最も直接的に関わるバーゼルの金融機関となるであろう。間接的な影響はより大きい。スイスの資産運用・資産管理がアジアの拠点に比べて比重を失えば、スイスにおける金融センターへの政治的支持は弱まり、小規模銀行への圧力は高まるであろう。そのイノベーション・ハブが香港、シンガポールその他の地にセンターを有する国際決済銀行(BIS)の所在地としてのバーゼルの役割は、中央銀行関係者のコミュニティを通じて、バーゼルをアジアの拠点と結びつけるであろう。
注
- このシナリオは、BCGの Global Wealth Report の各年版に示された傾向、並びにアジア及び湾岸諸国におけるスイスのプライベートバンクの成長戦略を外挿したものである。これは推測的な構成である。数値及び予測は要確認。 ↩
- シンガポール(シンガポール金融管理局)、香港(香港金融管理局、証券先物委員会)及びアラブ首長国連邦(ドバイ金融サービス機構(DFSA)、金融サービス規制庁(FSRA))における外国プライベートバンクの規制環境、並びに地政学的緊張がブッキングセンターの選択に及ぼす影響については、関係当局の刊行物及びアジアにおける資産運用・資産管理に関する文献を参照。要確認。 ↩
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