追及権:スイスにそれが存在しない理由
スイスと欧州連合(EU)との間の法的相違のうち、美術市場にとって特に重要なものが一つある。それは芸術家の追及権、すなわちdroit de suiteである。指令2001/84/ECの下で、EU加盟国は、芸術家およびその相続人に対し、その作品が美術市場の専門業者によって転売される際に価格の一定割合を受け取る権利を付与している。料率は逓減的であり、一件の売却につき12,500ユーロの上限がある。英国は2006年にこの権利を導入し、EU離脱後もこれを維持した。スイスには追及権がない。著作権法改正の過程で導入の提案が何度かなされ、直近では2020年に施行された著作権法改正の際にも提案されたが、議会で多数を得るには至らなかった。1
追及権がないことにより、スイスは、存命の芸術家および死後70年を経過していない芸術家の作品の転売地として、わずかな競争上の優位を有している。もっとも、アート・バーゼル(Art Basel)にとってのその実務上の重要性を過大評価すべきではない。見本市での売却の多くは、芸術家を代理する画廊による一次販売であり、これには追及権は適用されないからである。それでも、こうした芸術家の作品の二次市場での売却については、バーゼルでの売却はパリやロンドンでの売却と比べて価格の数パーセントを節約しうる。芸術家団体は、作品の価値上昇の分配にあずかれない芸術家にとって不公平であるとして、追及権がないことを批判してきた。この議論は今後も続くと見込まれる。2
注
- 2001年9月27日の指令2001/84/ECに基づく追及権(料率および12,500ユーロの上限)、英国における2006年の導入(Artist's Resale Right Regulations 2006)、ならびにスイス著作権法(URG、SR 231.1)における追及権の不存在(2020年4月1日施行の改正の際の不成立に終わった提案を含む)については、関係法令および議会資料を参照。要確認。 ↩
- スイスにおける追及権導入をめぐる議論および芸術家団体(たとえばVisarte)の立場については、著作権法改正に関する議会資料および各団体の刊行物を参照。現状は要確認。 ↩
本記事は一般的な情報提供のみを目的としています。法律上または税務上の助言を構成するものではなく、個別案件に関する助言に代わるものでもなく、弁護士と依頼者との間に委任関係を生じさせるものでもありません。本記事は2026年10月時点の法的状況を反映しています。