来歴と国家社会主義下で略奪された美術品
来歴(プロヴナンス)とは、作品の制作から現在に至るまでの所有の記録された歴史である。20世紀の大半において、来歴は学術的関心の対象であり、コレクターにとっては主として、由緒ある来歴が価格を引き上げるという点で重要であった。1990年代後半以降、来歴は第一級の法的・倫理的問題となった。その理由は、1933年から1945年までの間に、ドイツおよび占領国において、ユダヤ人コレクターその他の迫害された人々が所有していた美術品が、組織的に略奪、没収および強制売却されたことにある。これらの作品の多くは戦後、美術市場に流入した。スイスを経由したものもあれば、善意でそれを取得した公的・私的コレクションに収まったものもある。1
1998年12月のホロコースト時代の資産に関するワシントン会議において、スイスを含む44か国がWashington Conference Principles on Nazi-Confiscated Artを承認した。この11の原則は、没収された作品の特定、記録文書の公開、情報の公表、そして戦前の所有者およびその相続人の探索を求めている。そのような所有者が見つかった場合、原則は「公正かつ公平な解決」を達成するための措置を求めている。この原則は法的拘束力を有しない。それでも、原則は美術館や業界の実務を形作ってきた。特に公的機関は、自国政府が承認した基準を容易に無視することができないからである。2
2009年6月にプラハのホロコースト時代の資産に関する会議において47か国が採択したテレジン宣言は、ワシントン原則を確認し、これを拡張した。同宣言は、各国に対し、原則を公的に保有される作品だけでなく私的に保有される作品にも適用するよう奨励し、強迫下での売却もまた公正かつ公平な解決を要しうることを認めた。ワシントン原則25周年にあたる2024年3月には、一群の国家がその適用に関するベスト・プラクティスを承認し、これによって、とりわけ強制売却をどのように評価すべきかが明確にされた。スイスはこれらの展開に参加した。現状は要確認。3
スイスでは、連邦文化庁が1999年に略奪美術品に関する窓口(Anlaufstelle Raubkunst)を設置した。同窓口は、美術館、コレクターおよび請求者に助言を行い、2016年以降はスイスの美術館における来歴調査を財政的に支援している。2023年、連邦参事会は、歴史的に問題を抱えた文化遺産に関する独立委員会の設置を決定した。同委員会は、問題のある歴史を持つ作品をめぐる紛争において、拘束力のない勧告を発することができる。政府によれば、同委員会は、国家社会主義の下で略奪された文化財と、植民地的文脈に由来する物品の双方を対象とする。その実務により、一般原則がスイスの事案においてどのように適用されるかが明らかになるであろう。現状は要確認。4
注
- 国家社会主義下における美術品の略奪および強制売却と、その後の作品の流通については、Lynn H. Nicholas, The Rape of Europa (1994)、およびJonathan Petropoulos, Art as Politics in the Third Reich (1996) を参照。要確認。 ↩
- Washington Conference Principles on Nazi-Confiscated Art(1998年12月3日)。スイスを含む44か国が承認。要確認。 ↩
- Terezin Declaration(2009年6月30日);Best Practices for the Washington Conference Principles on Nazi-Confiscated Art(2024年3月)、米国国務省公表。現状は要確認。 ↩
- 連邦文化庁の略奪美術品に関する窓口(1999年以降)、美術館における来歴調査に対する連邦の資金援助(2016年以降)、および歴史的に問題を抱えた文化遺産に関する独立委員会については、連邦文化庁および連邦参事会の刊行物を参照。日付および現状は要確認。 ↩
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