製薬金融と研究:ライフサイエンスとの結び付き
第G部で述べたライフサイエンス・グループは、スイスにおける人工知能への最大の民間投資者に数えられるが、その投資は金融よりも研究開発に資するものである。Rocheは、その研究組織及びサウスサンフランシスコの子会社Genentechを通じて、「lab in the loop」と呼ぶプログラムを構築した。そこでは、モデルが創薬のための仮説を生成し、それを実験室での実験が検証し、その結果がモデルを改善する。Genentechは2021年に機械学習企業Prescient Designを買収し、2023年には半導体メーカーNVIDIAとの協業を発表した。1 Novartisは、2019年に締結されたMicrosoftとの提携や、2024年1月に発表されたAlphabetグループの企業Isomorphic Labsとの協業を含むパートナーシップを通じて、同様の戦略を追求してきた。2
そうしたプログラムが、標的から承認医薬品に至る長く費用のかかる道のりを短縮するか否かは、依然として不確実である。機械学習を大幅に利用して発見されたいくつかの化合物は2020年代初頭に臨床試験に入ったが、市場に到達する割合が従来の手法で発見された化合物のそれと異なることは、まだ示されていない。したがって、慎重な観察者は業界の主張を慎重に扱っている。3 金融センターにとって、その影響は二つの点で重要である。人工知能への投資は、研究支出の構成と、各グループがバーゼルで採用する専門家の特性を変える。この技術が成功すれば、第G部第IV章で述べたライセンシング及びバイオテク・ベンチャー・ファイナンスの経済性も変わり得る。モデルとデータにアクセスできるより小規模なチームが、より低いコストで医薬品候補を生み出し得るからである。
各グループは、財務及びトレジャリー機能においても人工知能を利用している。会計、調達及び給与計算のためのシェアード・サービス・センターは、その多くがバーゼルから又は国外のより低コストの拠点から全世界の事業にサービスを提供しており、自動化の当然の候補である。トレジャリー部門は、キャッシュフロー及び為替エクスポージャーについて予測モデルを利用している。第G部第III章で述べたピラー2の報告要件に直面している税務部門は、多数の法域から情報を収集し照合するためにデータ・ツールを利用している。4 これらの用途は創薬ほど目立たないが、地域の雇用への影響はより大きいものとなる可能性が十分にある。
注
- Roche及びGenentechの年次報告書、並びにPrescient Designの買収(2021年)及びNVIDIAとの協業(2023年11月)に関するプレスリリース。Genentechの刊行物における「lab in the loop」アプローチの説明。要確認。 ↩
- Microsoftとの戦略的提携(2019年10月)及びIsomorphic Labsとの研究協業(2024年1月)に関するNovartisのプレスリリース、並びに年次報告書。状況は要確認。 ↩
- AIにより発見された化合物の臨床パイプライン及び成功率に関する初期の証拠については、2022年以降の Nature Reviews Drug Discovery 及び Drug Discovery Today のレビュー論文を参照。要確認。 ↩
- 製薬グループのコーポレート・ファイナンス及び税務機能については、第G部第II章及び第III章を参照。シェアード・サービス及び税務報告におけるAIの利用については、大手監査法人及びコンサルティング会社の刊行物を参照。状況は要確認。 ↩
本記事は一般的な情報提供のみを目的としています。法律上または税務上の助言を構成するものではなく、個別案件に関する助言に代わるものでもなく、弁護士と依頼者との間に委任関係を生じさせるものでもありません。本記事は2026年10月時点の法的状況を反映しています。