多言語による契約起草 — 概観と要約
本部のこれまでの三つの章は、バーゼルで話され、書かれ、聞かれる言語を描いてきた。すなわち、州(カントン)の機関のドイツ語、街路のバーゼル方言(Baseldytsch)、アルザスの隣人たちのフランス語、そして製薬グループ及び国際決済銀行(BIS)の英語である。本章は、言語社会学から、法律家、銀行家、公証人及び企業内弁護士が日々の業務において直面する問題へと目を転じる。異なる言語を話す当事者が取引について合意するとき、当事者は、その合意をいずれの言語で記録するか、複数の版が存在する場合にいずれが優先するか、そして異なる法体系において異なる法的意味を持つ語を裁判所又は仲裁廷がいかに読むかを決めなければならない。三つの国が数キロメートルの範囲内で交わる地域においては、これらの決定は日常的なものであるが、交渉の終盤になって、商業条件に払われるよりも少ない注意をもって行われることが少なくない。1
本章は、実務家のための章として書かれている。まず、バーゼル地域において多言語契約を生み出す取引と、当事者がそれを管理するために用いる言語条項とを取り上げる。次いで、スイス法、ドイツ法、フランス法及びイングランド法が適用する解釈準則を比較する。準拠法が、裁判所が契約をいかに読むか、また言語版の間の抵触をいかに解決するかを決定するからである。本章の後半では、翻訳不能な法概念、準拠法の選択、裁判管轄及び仲裁、越境労働者及び消費者の特別な地位、宣誓翻訳者及び公証人の役割、起草における機械翻訳及び人工知能の利用、並びに多言語立法が契約起草者に与える教訓を論じる。本章を締めくくるチェックリストは、散文で書かれている。起草上の決定は文脈に依存し、チェック欄の一覧に還元することになじまないからである。筆者は英語及びドイツ語で契約を起草し、交渉している。本章は、そうした実務において生じる問題を反映しているが、特定の案件に依拠するものではない。2
注
- バーゼル及びドライラントの言語状況については、本部第I章から第III章までを参照。三国経済圏については、第H部第II章(「Regio Basiliensisと上ライン」)を参照。要確認。 ↩
- 多言語契約に関する一般的文献としては、スイス債務法(CO)第18条に関する注釈書、ドイツ民法典(BGB)第133条及び第157条に関する注釈書、並びに欧州における契約解釈に関する比較法研究がある。具体的な文献名は要確認。 ↩
結論
多言語契約は、バーゼルにおいて日常的な現実である。この地域の医薬品ライセンス、国境を越えた銀行取引、越境雇用、不動産及び交易が、スイス、ドイツ、フランス及び世界各地の当事者を結びつけるからである。これらの契約を規律する法は、当事者の真意と信義誠実とを重視する点で共通しているが、注目すべき例外はイングランド法であり、同法は文言により大きな比重を置き、一般的な信義誠実義務を否定する。Gewährleistung、Konventionalstrafe、Garantie、Bürgschaft及び信託といった法概念は、きれいに翻訳することができない。準拠法、法廷地及び手続の言語は、版の間の齟齬がいかに解決されるかを決定し、他方で越境労働者、消費者、公正証書及び商業登記の届出に関するルールは、それぞれ独自の言語を課している。機械翻訳と人工知能は翻訳を迅速にしたが、用語管理、法的審査及び職業上の守秘義務の保護の重要性をむしろ高めている。
多言語契約の注意深い起草は、国際的ビジネス拠点としてのバーゼルの役割を支える目立たない能力の一つである。それは、バーゼル公会議とエラスムスの時代以来、同市を形作ってきた、言語、法体系及び文化の間を仲介する同じ能力を反映している。この能力には公共的・文化的な側面もあり、本部の最終章では、文化をバーゼルのソフトパワーの手段の一つとしてきた美術館、財団及びパトロンを通じて、その側面を検討する。
本記事は一般的な情報提供のみを目的としています。法律上または税務上の助言を構成するものではなく、個別案件に関する助言に代わるものでもなく、弁護士と依頼者との間に委任関係を生じさせるものでもありません。本記事は2026年10月時点の法的状況を反映しています。