マージン、コストとコンプライアンス負担
スイスの資産運用・資産管理の収益性は、複数の方面から同時に圧力を受けてきた。顧客の価格意識は高まっており、その一因は、銀行守秘義務の終焉によって、顧客が秘匿性に対して支払っていたプレミアムが失われたことにある。パッシブ運用商品は、顧客がポートフォリオ運用に対して支払う意思のある手数料の水準を引き下げた。デジタル・プラットフォームは比較を容易にした。その結果、前述の業界調査によれば、運用資産に対する収益として測られるスイスのプライベートバンクの粗利益率は、過去15年間にわたり低下してきた。1
コストは逆の方向に動いてきた。2008年以降、規制は何倍にも増えた。金融サービス法は、助言における情報提供、適合性及び記録保存の義務を導入した。マネーロンダリング防止規則は繰り返し強化され、2022年2月以降は制裁スクリーニングがそれ自体独立した業務分野となった。多数の国の顧客にサービスを提供する銀行は、各対象市場の規則を遵守しなければならず、それらはしばしば現地の免許、登録又は提携先を要求する。2 多くの金融機関にとって、情報技術は最大の単一コスト項目となっている。勘定系システムを更新し、サイバーリスクを管理し、顧客インターフェースを近代化しなければならないからである。
利益率の低下とコストの上昇の組合せは、前述の業界再編の多くを説明する。それはまた、多くの小規模銀行が中核業務を専門の事業者、すなわち銀行ソフトウェア会社や自らのインフラを他行に提供する大手銀行に外部委託している理由をも説明する。スイスでは、勘定系ソフトウェアの提供者及び業務サービスの提供者が、銀行エコシステムの重要な一部となっている。3 資産規模50億ないし100億スイスフランの銀行が2035年に独立を維持できるか否かは、主として、利益の余地を残すコストでそうしたサービスを購入できるか否かにかかっている。
注
- 2010年以降のスイスのプライベートバンクにおける粗利益率(運用資産に対する収益のベーシスポイント)の低下及び経費率の推移については、KPMGとザンクトガレン大学による年次調査、並びにスイス銀行協会の Banking Barometer を参照。数値は要確認。 ↩
- スイスの銀行にとっての規制コスト(金融サービス法(FinSA)、マネーロンダリング防止法(AMLA)の改正、制裁コンプライアンス、クロスボーダー規則)については、金融センターに関する連邦参事会の報告書及び規制コストに関するスイス銀行協会の刊行物を参照。要確認。 ↩
- スイスの銀行による勘定系業務及びオペレーションの専門事業者への外部委託、並びに外部委託に関するスイス金融市場監督機構(FINMA)の規則(FINMA通達2018/3)については、FINMA及びスイス銀行協会の刊行物を参照。通達番号及び現行の状況は要確認。 ↩
本記事は一般的な情報提供のみを目的としています。法律上または税務上の助言を構成するものではなく、個別案件に関する助言に代わるものでもなく、弁護士と依頼者との間に委任関係を生じさせるものでもありません。本記事は2026年10月時点の法的状況を反映しています。