バックオフィスにおける労働市場
人工知能が雇用に与える影響は不確実であるため、推計は大きくばらついている。国際通貨基金その他の研究は、先進国経済における職の大きな割合がこの技術にさらされていることを示唆している。この影響は、ある作業では代替をもたらし、別の作業では補完をもたらし得るが、そのバランスは職業と、企業がこの技術を導入する方法に左右される。1金融サービスは最も影響を受けやすい部門の一つである。規則に従って情報を処理する作業に多くの人員を雇用しているからである。
バーゼルにおいて最も影響を受けやすいのは、銀行及び保険会社のバックオフィス及びミドルオフィス、製薬グループのシェアードサービスセンター、そしてコンプライアンスにおける機能である。取引モニタリング、顧客の受入れ、保険金請求の処理、会計及び報告は、いずれもモデルがより速く安価に遂行できる作業を含んでいる。こうした業務の一部は、生成モデルが登場する前から、既にスイス国内又は国外のより低コストの拠点に移転していた。人工知能は今やその一部を完全に置き換える可能性がある一方で、モデルを監督し、その結果を解釈し、例外に対処できる人材への需要を生み出している。2第H部第II章が示したとおりこれらの労働力の相当部分を占めるドイツ及びフランスからの越境通勤者も、居住者とともに影響を受けることになろう。
コンプライアンス機能は、この両義性をよく示している。第E部で述べたとおり、銀行は金融危機及び外国人顧客に対する銀行秘密の終焉の後、コンプライアンス部門を大幅に拡充した。自動化により、定型的な審査に必要なアナリストの数は減少し得る。しかし、ガバナンス、モデル検証及び文書化に関する規制上の要求は新たな業務を生み出し、他方で意思決定の責任は人間に残る。予想される結果は、より小規模ではあるがより高い資格を備えたコンプライアンス人員であり、その構成員には法律知識とデータ及びモデルに関する理解の双方が求められる。3バーゼル大学、北西スイス応用科学大学(FHNW)及び金融部門の研修機関は、職員をこうした役割に備えさせる上で一定の役割を果たすことになろう。
注
- International Monetary Fund, Gen-AI: Artificial Intelligence and the Future of Work, Staff Discussion Note SDN/2024/001, 2024年1月。要確認。 ↩
- バーゼル地域の金融サービス及びシェアードサービスにおける雇用については、バーゼル=シュタット州統計局の統計及びBAK Economicsの立地調査を参照。数値は要確認。 ↩
- コンプライアンス機能の変化と必要とされる技能については、スイス銀行家協会の報告書並びにコンプライアンス及びレグテックに関するスイスの応用科学大学の研修プログラムを参照。現状は要確認。 ↩
本記事は一般的な情報提供のみを目的としています。法律上または税務上の助言を構成するものではなく、個別案件に関する助言に代わるものでもなく、弁護士と依頼者との間に委任関係を生じさせるものでもありません。本記事は2026年10月時点の法的状況を反映しています。