化学工業への保険引受け
化学産業は、保険者にとって特別な課題を提起した。その工場は、可燃性、爆発性および毒性のある物質を取り扱い、高圧・高温の工程を運転し、大量の原料と製品を貯蔵していた。火災や爆発は、工場を破壊し、労働者や住民の命を奪い、環境を汚染し、数か月にわたって生産を中断させうるものであった。潜在的な損失は大きく、不確実で、かつ相関していた。単一の事象が、財産、人および環境に同時に損害を与えうるからである。1
バーゼルの保険者は、化学企業および再保険者と協力して、これらのリスクの保険に関する専門知識を培った。保険者は工場を検査し、防火・安全対策について助言し、各工場のリスクに応じて保険料を設定した。化学企業の側も、自前の消防隊を組織し、安全規則を採用し、予防に投資した。保険者と産業との協力は、バーゼルにおける産業安全の発展に寄与した。
最大の化学リスクは、いかなる単一の保険者の引受能力をも超えていた。それらは、複数の保険者がそれぞれリスクの一部を引き受ける共同保険を通じて複数の保険者の間で分担され、元受保険者のリスクの一部を引き受ける再保険者に移転された。バーゼル商業銀行(Basler Handelsbank)の参加を得て設立されたチューリッヒのSwiss Reは、バーゼルおよび世界の化学リスクの主要な再保険者の一つとなった。第G部で検討する1986年のシュヴァイツァーハレの火災は、単一の化学事故が引き起こしうる損失の規模を示し、環境リスクの保険に変化をもたらした。
化学企業は、独自の保険の仕組みも発展させた。化学企業は、産業グループが所有するキャプティブ保険会社を設立し、それがグループのリスクを引き受けて再保険市場で再保険に付した。キャプティブにより、企業はリスクの一部を保有し、保険費用を削減し、再保険市場に直接アクセスすることができた。第I部は、バーゼルの製薬グループによるキャプティブの現代における利用を検討する。
注
- 化学産業のリスク(火災、爆発、事業中断、賠償責任、環境損害)の保険については、産業保険に関する文献を参照。要確認。 ↩
本記事は一般的な情報提供のみを目的としています。法律上または税務上の助言を構成するものではなく、個別案件に関する助言に代わるものでもなく、弁護士と依頼者との間に委任関係を生じさせるものでもありません。本記事は2026年10月時点の法的状況を反映しています。