為替リスクとスイスフラン高
為替管理は、バーゼルの財務部門の最も重要な任務の一つである。Rocheはスイスフランで、Novartisは米ドルで業績を報告しているが、その収益の大部分は米ドル、ユーロ、日本円、新興国通貨で得られている。両グループの費用のかなりの部分はスイスフランで発生しているため、スイスフラン高は利益率を圧迫し、Rocheにとっては報告上の収益と利益をも減少させる。両グループは取引上のエクスポージャーを一定程度ヘッジしており、通常は数か月の期間の先物為替予約やオプションを用いるが、外国での利益を報告通貨に換算することから生じる長期的な換算エクスポージャーをヘッジしようとはしていない。両社は報告において、スイスフラン建ての成長率に加えて、恒常為替レートベースの成長率を示している。1
スイスフランの強さは、スイス経済史において繰り返し現れるテーマであり、第D部第II章では化学産業についてこれをたどった。2008年の金融危機後の時期には、投資家が安全な避難先を求めたため、スイスフランは大幅に上昇した。2011年9月6日、スイス国立銀行(SNB)は1ユーロ=1.20スイスフランの最低為替レートを導入し、大規模な外貨購入によってこれを防衛した。2015年1月15日、スイス国立銀行は予告なくこの下限を放棄し、スイスフランはユーロに対して数分のうちに約20パーセント上昇した後、それよりやや低い水準に落ち着いた。2
製薬グループにとって、下限の撤廃は報告上の業績と利益率に即座の影響を及ぼした。国外売上高のスイスフラン換算額が減少する一方、スイスでの費用は変わらなかったからである。各社はこのような急激な変化に対してヘッジしておらず、そうする理由もほとんどなかった。スイス国立銀行は下限の維持を繰り返し表明していたからである。それでもなお、両社の事業は底堅さを示した。費用の大きな部分も国外で発生していたからである。バーゼルでの研究と生産は国際比較においてより割高となり、この事実は活動拠点に関する長期的な決定に反映された。製薬グループを含むスイスの複数の企業は、その後数年間にコスト基盤を見直した。3
注
- RocheおよびNovartisの為替エクスポージャー、そのヘッジ方針、および恒常為替レートベースの成長率の表示については、両グループの年次報告書の財務リスク管理に関する部分および財務概況を参照。要確認。 ↩
- 2011年9月6日にスイス国立銀行が導入し、2015年1月15日に放棄した1ユーロ=1.20スイスフランの最低為替レートについては、スイス国立銀行のプレスリリースならびに2011年および2015年の年次報告書を参照。それ以前のスイスフラン管理の歴史については、第D部第II章を参照。要確認。 ↩
- 最低為替レートの撤廃がRocheおよびNovartisの報告上の業績およびコスト構造に及ぼした影響については、両社の2015年および2016年の年次報告書、ならびにスイス国立銀行および経済研究機関の分析を参照。要確認。 ↩
本記事は一般的な情報提供のみを目的としています。法律上または税務上の助言を構成するものではなく、個別案件に関する助言に代わるものでもなく、弁護士と依頼者との間に委任関係を生じさせるものでもありません。本記事は2026年10月時点の法的状況を反映しています。