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大規模な運送・物流リスク

第D部では、内陸の都市がいかにして19世紀に運送保険の中心地となったかを述べた。第H部では、バーゼルのライン川の港湾と物流企業が製薬産業と国全体への供給に役立っていることを示した。運送中の貨物の保険は、Basler Transport-Versicherungs-Gesellschaftの時代から大きく変化した。現代の貨物保険証券は、通常ロンドン市場の協会貨物約款(Institute Cargo Clauses)に基づいており、倉庫から倉庫までの貨物を補償する。大規模な荷主は、ストック・スループット保険を購入する。これは、輸送中のみならず、工場、倉庫および配送センターでの保管中も含め、サプライチェーン全体を通じて貨物を補償するものである。1 医薬品がしばしば温度に敏感で、キログラム当たりの価値が高い製薬グループにとって、ストック・スループット保険はプログラムの中心的要素であり、キャプティブが商業保険会社とこれを分担することがある。

これらのリスクの大災害としての側面は、集積にある。数千のコンテナが同じ岸壁に置かれ、数百台の自動車が同じ船に積まれ、数十億相当の貨物が同じ倉庫に保管される。単一の事象がそのすべてを破壊しうる。2015年8月の天津港の爆発は、数十億米ドルと推計される保険損害をもたらし、その多くは船積みを待つ自動車その他の貨物に関するものであった。2020年8月のベイルート港の爆発は、倉庫、船舶および市の大部分を破壊した。2 2021年3月のスエズ運河におけるコンテナ船Ever Givenの座礁は、主要航路の一つを6日間にわたり封鎖し、共同海損、遅延および事業中断の問題を提起した。2024年3月にコンテナ船Daliとの衝突によって生じたボルチモアのフランシス・スコット・キー橋の崩落は、海上保険史上最大級の損害の一つとなる可能性がある。3

貨物保険会社は、再保険によってこうした集積から自らを守っており、海上・貨物ポートフォリオの大災害再保険はチューリッヒの再保険会社の得意分野の一つである。集積のモデル化は、コンテナおよび船舶の位置に関するデータが利用可能となったことにより改善した。2023年末以降の紅海における商船への攻撃は、戦争危険保険を再び注目の中心に押し上げた。保険会社が同地域を通航する航海の保険料を引き上げたため、多くの海運会社は船舶を喜望峰回りに迂回させ、輸送時間が延び、コストが上昇した。4 支払いが制裁に違反することとなる場合に補償を除外する海上保険証券の制裁条項は、この種目を第H部で論じた制裁コンプライアンスと結び付けている。

ライン川には固有のリスクがある。2018年と2022年の乾燥した夏には、ライン川中流域の航行を左右するカウプ水位観測所の水位が大きく低下し、船舶は積荷の一部しか運べなくなった。運賃は急騰し、スイスへの燃料および化学品の供給は途絶え、ライン渓谷の産業は生産を縮小しなければならなかった。5 物的損害が生じないため、伝統的な財物保険はこうした損失を補償しない。そのため、いくつかの保険会社および専門事業者は、水位が合意された水準を所定の日数にわたり下回った場合に支払いを行うパラメトリック型の低水位補償を開発した。6 この手段は、気候変動によって拡大するとみられる空白を、代替的リスク移転がいかに埋めうるかを示している。

注

  1. 2009年1月1日の協会貨物約款(Institute Cargo Clauses)(A)、(B)および(C)、ならびにストック・スループット保険については、海上貨物保険に関する文献を参照。バーゼルにおける運送保険の歴史については本書第D部第IV章を、ライン川の港湾については第H部第I章を参照。要確認。↩
  2. 2015年8月12日の天津港爆発(保険損害は一般に25億〜35億米ドルと推計)および2020年8月4日のベイルート港爆発については、Swiss Re, sigma、および海上保険市場の報告を参照。数値は要確認。↩
  3. スエズ運河におけるEver Givenの座礁(2021年3月23日〜29日)、およびDaliの衝突後のボルチモアのフランシス・スコット・キー橋の崩落(2024年3月26日)、ならびに保険損害および宣言された共同海損については、海上保険会社および国際海上保険連合の報告を参照。数値および状況は要確認。↩
  4. 2023年11月以降の紅海における商船への攻撃、戦争危険保険料の上昇、およびコンテナ輸送の喜望峰経由への迂回については、海上保険市場および国連貿易開発会議(UNCTAD)の報告を参照。状況は要確認。↩
  5. 2018年秋および2022年夏のライン川の低水位、カウプ水位観測所の意義、ならびに海運および産業に対する経済的影響については、ライン川航行中央委員会およびスイス・ライン港湾の報告を参照。要確認。↩
  6. カウプ水位観測所を指標として用いるライン川の低水位に対するパラメトリック保険については、関係事業者の刊行物および業界誌を参照。状況は要確認。↩

本記事は一般的な情報提供のみを目的としています。法律上または税務上の助言を構成するものではなく、個別案件に関する助言に代わるものでもなく、弁護士と依頼者との間に委任関係を生じさせるものでもありません。本記事は2026年10月時点の法的状況を反映しています。

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