大災害債券と保険リンク証券
キャットボンド(大災害債券)は特別目的ビークルによって発行され、その所在地は通常、バミューダ、ケイマン諸島、アイルランドその他適切な法制を有する法域である。ビークルは、保険会社、再保険会社、政府または事業会社でありうるスポンサーとの間で再保険契約を締結し、投資家に債券を発行する。発行代り金は担保信託に保管され、安全資産、通常はマネー・マーケット・ファンドまたは短期国債に投資される。期間中(通常3年または4年)に所定の事象が発生しなければ、投資家は元本を利息とともに回収する。事象が発生した場合、担保はスポンサーへの支払いに用いられ、投資家は元本の一部または全部を失う。1
事象を定義するトリガーには、いくつかの形態がある。損害填補型トリガーはスポンサーの実際の損害に応じて支払うもので、スポンサーのエクスポージャーに最も近い対応をもたらすが、投資家はスポンサーの保険金処理に依拠しなければならない。業界損害型トリガーは、独立機関が推計する保険業界全体の損害に応じて支払う。パラメトリック型トリガーは、特定地点における地震のマグニチュードやハリケーンの風速などの物理的パラメーターが閾値を超えた場合に支払う。最後に、モデル損害型トリガーは、事象のパラメーターをスポンサーのポートフォリオについて合意されたモデルに当てはめる。2 その選択には、支払額が実際の損害と乖離するリスクであるベーシス・リスクと、投資家にとってのモラル・ハザードおよび透明性との間のトレードオフが伴う。欧州の暴風雨リスクについては、業界損害の推計を、2009年に複数の保険会社および再保険会社がチューリッヒで設立したPERILS AGが提供している。3
Swiss Reは、市場の草創期から主要なスポンサー、アレンジャーおよびアナリストの一つである。同社は自らのポートフォリオを保護するためにキャットボンドを用い、資本市場部門を通じて顧客のための取引を組成し、市場のトータル・リターンを追跡するキャットボンド指数を公表してきた。2003年には、Vita Capitalという名称のビークルを通じて極端な死亡率のリスクを補償する債券を発行し、生命リスクの市場を開いた。4 政府や国際機関もスポンサーとなっている。メキシコは2006年以来、世界銀行が組成する債券によって地震とハリケーンに備えている。2018年には、いくつかの中南米諸国が共同発行に参加した。世界銀行がパンデミック緊急ファシリティのために2017年に発行したパンデミック債は、COVID-19の発生後、2020年に支払いを行った。支払いを数か月遅らせたその複雑なトリガーは批判を招き、緩やかに進行する事象に対するパラメトリック設計の限界を示した。5
市場は大幅に成長した。2017年のハリケーンとその後の数年間の損失による一時的な後退の後、専門誌が収集したデータによれば、発行残高のあるキャットボンドの規模は2025年までに約500億米ドルに達した。担保付再保険、サイドカーおよび業界損害ワランティを含めると、保険リンク証券は約1,000億米ドルの再保険引受能力を占めており、これは世界の財物大災害再保険市場の相当部分に当たる。6 主たる投資家は、年金基金、エンダウメント、政府系ファンドおよび専門のファンド・マネージャーである。
注
- キャットボンドの構造(特別目的再保険ビークル、担保信託、リスク期間、トリガー)については、保険リンク証券に関する文献および格付機関が要約する取引書類を参照。要確認。↩
- トリガーの類型(損害填補型、業界損害型、パラメトリック型、モデル損害型)とそれに伴うベーシス・リスクについては、保険リンク証券に関する文献を参照。要確認。↩
- 業界損害型トリガーで用いられる、欧州その他の地域における自然災害事象に関する業界エクスポージャーおよび損害データを提供するPERILS AG(チューリッヒ、2009年設立)については、PERILS AGの刊行物を参照。要確認。↩
- キャットボンド市場におけるSwiss Reの役割、Swiss Re Global Cat Bond Index、およびVita Capital死亡率債(2003年、4億米ドル)については、Swiss Reの刊行物および保険リンク証券に関する文献を参照。数値は要確認。↩
- メキシコがスポンサーとなったキャットボンド(2006年以降)および太平洋同盟の共同発行(2018年)、ならびに2017年6月の世界銀行パンデミック債(3億2,000万米ドル)と2020年4月のその支払い(約1億9,600万米ドル)については、世界銀行財務局の刊行物および批判的文献を参照。数値は要確認。↩
- 発行残高のあるキャットボンドの規模(2025年に約500億米ドル)および代替的再保険資本の規模(約1,000億米ドル以上)については、Artemisの市場データ、Aon SecuritiesおよびSwiss Re Capital Marketsの報告、ならびに格付機関の刊行物を参照。数値および状況は要確認。↩
本記事は一般的な情報提供のみを目的としています。法律上または税務上の助言を構成するものではなく、個別案件に関する助言に代わるものでもなく、弁護士と依頼者との間に委任関係を生じさせるものでもありません。本記事は2026年10月時点の法的状況を反映しています。